起業の準備の重要性
会社員として長年勤務をしてきた人は、定年時にはある程度まとまった金額の退職金を受け取ることができます。
その退職金を元手にして、それまで自分がやりたいと思ってきた分野で起業をしようと考えている人も多いのではないでしょうか。
現在は国内での起業数が減少しているということもあり、国や地方自治体が起業したい人を支援する制度も多く見られています。
有名なのが、日本政策金融公庫による「女性、若者/シニア起業家支援資金」というものです。
こちらは女性または35歳未満、または55歳以上の人に対し、7200万円を上限として事業資金を融資してもらえるという制度です。
融資を受けるためにはいくつかの条件がありますが、定年退職後に自分のやりたいと思っていた事業がある人にとっては、当面の生活費となる退職金に手を付けずに起業ができるという大きなメリットがあります。
実際にそうして定年もしくは早期退職後に起業をして成功をした人も多く、セカンドライフを充実させていくためにも起業はおすすめの方法です。
しかしその一方で、起業を夢見て早期に退職をしたものの、思うように事業展開をすることができず、高齢者になってから大きな負債を持つことになってしまう人もいます。
シニア世代の起業はそれまで培ってきた仕事のノウハウや人脈を活かすことができるというメリットがあります。
しかし、その自分のやりかたにあまりにこだわりすぎてしまうと、それが仇となって大きな失敗の原因になってしまうのです。
いつか起業をしたいと考えているのであれば、ただ漠然と「起業したい」と思うのではなく、きちんと市場や資金繰りなどをリサーチし、そこからリスク管理をしていくことが大切になってきます。
今やりたいと思っている事業は本当に商売として成り立つことなのか、という基本的なことを考えてみてください。
準備しておくこと、心構え
定年後に限りませんが、起業をしていくためにまず必要になるのが「市場調査」「融資」「資金繰り計画」です。
失敗しやすいシニア起業のケースとして「やりたいことが定まらず、社長になることが目的になっている」「やりたいことに固執しすぎて利益や資金繰りが度外視されている」「全く経験のない分野に突然進出した」というようなことが挙げられます。
シニア起業の場合、それまでの会社員生活で何らかのフラストレーションが溜まっており、それを解消したいということが起業の目的になっていることが多いものです。
しかし「人に使われたくないので人を使う立場になりたい」や「残業が多くてつらいのでのんびりとしたお店で仕事をしたい」といったような目的は、起業そのものに向かい合っていません。
十分に資金に余裕があるのであれば趣味として起業をするのもよいですが、老後の資金を稼ぐために起業したいというのであれば、きちんと利益を作り出せる方法を考えていかなければいけません。
シニア起業の成功例を見てみると、いきなり多額の資金でスタートするのではなく、ゆるく開始するということが挙げられます。
その際に注意しておきたいのが、クレジットカードの上限額。
最初から多額の資金計画を立てるのは厳しいですが、ある程度の見積もりを立てて上限額を考えておくことも必要です。
無駄な経費を削減するという意味でも、クレジットカードの管理をしっかり行い、利益を上げていくことを意識していきましょう。
退職金や融資でいきなり数千万の金額を手にするとつい気が大きくなってしまい、一等地や最新の設備、一流の人材などといったかなり大きな投資をしたくなってしまいます。
ですが、現代は初期投資の大きさで事業がうまくいくという時代ではありません。
むしろ小さく始めてもアイディアや事業計画がしっかりしていることの方が、のちに大きく成長していく傾向があります。
実際にうまくいった例としては「地元の食材を使ったパン販売」や「シニア人材を使った子育て支援」「笑いをテーマにした市民講座」「ペットのお散歩サービス」といったようなことがあります。
いずれもそれまで会社員として仕事をしてきたノウハウから、世の中のニーズをつかんだことで成功をしたということが共通点です。
起業ありきではなく、「今の世の中ではどういったことが求められているか」を考えることが、成功へのステップになるでしょう。
※本記事作成にあたり参照した記事
女性、若者/シニア起業家支援資金